パソコンから離れられなくなりそうな少年のサイト


by hissatuden
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みかん37箱目!この前のが36箱目!

おはようございます。

結構衝動的に書いてみた





所謂都会と呼ばれる街の一角に、大きな人溜りが出来ていた。

その人々はギターとマイクを持った、17歳くらいだろか、2名の若い男女を囲っていた。

路上ライブというものだった。

彼は今まで、自分の曲が人々に評価されることを知らなかった。

ギターを弾けば、綺麗な音色がでて人々を魅了し、

口、喉を開けば、汚い音しか出てこない。

でも、彼は歌うことをやめなかった。

ギターの綺麗な音だけじゃなくて、言葉を音楽に乗せ、

気持ちを伝えたかったからだ。

だから普段は一人でギターを弾き、歌った。

彼は持てる力の限り歌った。

しかし、今夜は彼女が歌ってくれる。

今日の演奏も終えようとしていた。

だが、歓声を上げている人々の中に居る、

体格の良い中年の男性と、若そうな男性が少年らを見つめていた。





―何故俺の曲は皆に聞いてもらえない?―

路上ライブが終われば、いや、終わりに行くにつれて、

僅かに居た客は姿を消している。

ひどい歌声に耳が痛いのだろう・・・。

原因は分ったが、やめる術は知らなかった。

お袋の居る岩手に帰ろうかな・・・。

そう数日間悩んでいたときの事。

ライブの後、街を歩いていたら、偶然ひとつの事務所を見つけた。

それは、仮メンバーとして事務所の中で、気に入った人を、1日~2週間バンドに入ってもらうことの出来る、ということだった。

ボーカルやドラム、ギター。本当に様々な人が居て、より取り見取りだった。

彼はボーカルの染めたような緑でなく、自然で鮮やかな緑の綺麗な髪をした女の子が居た。

彼は、彼女に一目惚れという奴をした。

内気な彼だが、彼女に思い切って話しかけた。

「僕の曲を歌ってくれませんか?」

今にも消えそうな声で、少し頬を赤く染めて彼はいった。

「私からもお願いするわ、貴方の曲を歌いたい。」

その彼女の笑顔はとてもまぶしくて、彼は赤く染まった頬を更に赤く染めた。

彼はマネージャーに彼女を借りたいと申し出た。

しかし、マネージャーが提示した金額は働いているとは言え、コンビニのバイト等しかしておらず、

金銭の残りはろくにない彼にとっては、開いた口が閉まらないような値段だった。


彼は走った、走りだしていた。

払える値段でないと知った瞬間、緑の髪の子の手を離さないように握り締め、

事務所を出て、行く先も決めずに走った。

彼女はとても笑顔だった。

5分くらい走っただろうか、彼女の事も考えゆっくり走っていたが、

事務所の人が連絡したらしき警官に追われていた。

彼女にペース上げるけど、大丈夫?気を遣って聞こうとした時だ、

落ちているジュースの缶を踏み、足が思わぬ方向に曲がった。

彼は思いっきり足を挫いた。

青あざとなり、彼は立ち上がったが、逃げる事をやめた。

「急に引っ張りだしてごめんね。走るのも大変だったよね?
 俺はここまでのようだから。」

なきそうになるのを必死にこらえて、彼は息を切らしながら言った。

最後のお別れの言葉だった。

彼女は、ニッコリと笑った。

後ろから追っかけていた警官がやがて追いついた。

彼は諦めた。

追い詰められたと同時に両手を警官の前に差し出した。

その時だった、彼女が彼の手を離さないように握り締め、走りだした。

彼は訳が分からなかったが、幾らか痛みが引いて来た足首を庇いながら走り出した。

10分くらい走ったところで、彼が音を上げた。

もう無理だ・・・走れない・・・という代わりにギターを出した。

「一曲聴いてくれるかな?」

彼の最後のお願いだった。

彼女は彼のギターの音が大好きだった。

少しづつ人溜りが出来た。

歌を歌えば、人は減る、けど彼は最後まで歌おうと、歌い始めた。

酷い声は相変わらずだったが、ひとつだけ違った。

隣に居る彼女が笑ってくれたのだった。

馬鹿にするような笑いじゃない、もっと純粋な笑顔だった。

一番が歌い終わり、間奏が始まった時だろうか、

客は彼らから背を向け、また夜の街の流れに溶け込もうとしていた。

2番が始まったとき、彼は悔しくて、寂しさで上手く声が出なかった。

しかし、歌声は遠くまで響いていた。とても、とても綺麗な声が。

思わずギターの演奏が止まった。

その声は隣から聞こえた。彼女が歌っていた。

「何で歌えるの?何で知っているの?」

彼は聞きたかったが、口をつむんだ。この声を止めたくなかった。

帰ろうとしていた客は目の色を変え、曲に聞き入った。

ギターも建て直し、彼のやりたかったライブが出来ていた。

彼は夢心地だった。

「この演奏が出来て楽しかった。またやりたかった。」

そう考えたら涙が出た。

人溜りの中では、二人の男性が彼らの曲に聞き入っていた。

一人の若い男性が「警部、止めなくていいんですか?」と聞いた。

もう一人の中年の男性は「馬鹿野郎」と一人の客として言った。

それから約10分後、ライブが終わった。

人々は音楽に酔い、大歓声を上げた。

そして、彼は警部の元に歩みよっていった。彼女もついていった。

彼はただ、すいませんでした、と一言だけ言った。

警部が何も言わずに手錠を掛けた。

彼女と本当にお別れだった。

彼は聞いた。何故あの曲を知ったいたの?

彼女はまた、愛らしい笑顔に頬を赤く染め答えた。

言ったでしょ?貴方の曲を歌いたいって、

いつも聞いていたの、貴方の曲好きだから。

彼女はそれ以上口を開かなかった。

彼が警官達にパトカーに乗せられる直前に、

彼女は叫んだ。

『また、一緒に歌おうね!』

彼はただ、握りこぶしに親指を立てて、彼女に向けた。

彼女は彼の涙と、その手を見て、また愛らしく微笑んだ。
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by hissatuden | 2008-09-14 08:45 | 小説